おばけペンション

宿のオーナーが地下室にあるワインセラーで自殺して、それを発見した妻は狂って、息子の命を断った…そんな噂から、テレビや雑誌で取り上げられる有名心霊スポットになった謎多きペンション。
森の小道をひた走ると突如それは姿を現す。まるでグリム童話の世界に舞い降りたよう。
館に化けた魔女が口を開けて待っていた。
の暖炉が一番の見所だ。円形にそそり立つレンガ造りの壁には、誰の仕業か時期により様々な絵が描かれ、心霊雰囲気の盛り上げに一役買っていた。今は小休止かな。
一度振り返り、気持ちを整える。扉がアーチ状でお洒落だ。
煙突は天井までスッと延びている。
レンガ張りでかっこいい階段。気を付けて登らないと…。
鉄骨がむき出しで寒々しい光景だ。
キャットウォーク。
どこでもドア。
確かにここには、人々の営みがあった。
このペンションは情報が極端に少ない。今やシンボルとなった物言わぬ暖炉は、ここの歴史を全て知っているのだろう。

暖炉の前では、多くの語りと出会いの時間が紡がれたに違いない。野生のトラさんも遊びに来ていた。
そろそろ、日が暮れる。またね。
地下室は見当たらなかった。
何度も振り返った。この廃墟はもう長くは持たないな。我が身を支えきれぬ廃墟が日本中で待っている。一枚でも多くフィルムに収めたい。


Departure

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