
晩秋の候。紅葉が絨毯のように敷き詰められた小路を進んでゆく。

石造りの門柱。事前情報がなければ、ここが歯科医院であることには気付かないだろう。

敷地は広く趣がある。お屋敷というに相応しい佇まいだ。地域の名士であったことは疑いようもない。

建物はかなり傷んでおり、もう長くは持たないだろう。

随所に残る当時の面影。

石造りの灯籠まである。周囲は鬱蒼とした竹藪に包まれている。

歯科医師会員のプレート。



赤ちゃん用の粉ミルク。きっと賑やかな時代もあったのだろう。

2階へ。

お膳の足まで丁寧に梱包。持ち主の几帳面な性格が伺える。

薬瓶だ。

陸海軍御用達。滅多に見かけない貴重な代物だ。


収納箱に並べられた大量のスケーラー。


薄暗い部屋で空気は滞留している。
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気になる箱。そっと開けると…
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咬合器(こうごうき)があらわれた。咬合器とは、患者の顎運動や咬合の位置を再現するための装置なそうだ。

当時の様子はもう想像の及ばない域にある。この場所もきっと当時の人々の記憶と共に、何の前触れもなく地上から姿を消していくのだろう。

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