
創業時期不詳ながら、1965年辺りから存在し、1980年頃に閉業した温泉旅館。

現在は宿泊棟一棟と浴場の建物を残し、他は崩落した骨組みと廃材の山と聞いている。ダメ元での訪問だ。

建物が薄っすらと見えてきた。周囲は凄まじいまでの、虫たちの声に包まれている。

外観は期待以上。ちょっとドキドキしてきた。



色を失った無機質な世界が続く。

二階への階段を横目に、

一階を突っ切った。

外階段から二階へ行ってみよう。


やはり暗い。

実はある生き物の大群と戦っていた。

それは元気なコウモリたち。凄まじい数になってきたので…ここで踵を返す。

森の中にあり、陽もなかなか届かない。かつての旅館はすっかりコウモリたちに占拠されていた。


宿泊棟に別れを告げる。浴場へ行ってみよう。
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ようやく見えてきた。

屋上もあったようだが、今はとても登れない。

コンクリの浴場はまだしっかりと原型を留めていた。

今はここを訪問する人はほぼいないだろう。



器などの残骸。当時の様子はもう伺えない。

帰ろう。

帰り際、突如として虫たちのけたたましい鳴き声が一斉に止んだ。しばしの静寂の後、再び周囲は虫たちの大合唱に包まれた。それは不思議な体験で今も記憶に残る。蒼林閣を思い返す時、まず脳裏に浮かぶのはこの帰り際のワンシーンである。
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